薔薇のために【おすすめ人気作品】

漫画『薔薇のために』あらすじ

大学受験に失敗した枕野(まくらの)ゆり。それを皮切りにボーイフレンドにはフラれ、たったひとりの身内である祖母も亡くなるという不幸に見舞われる。
ところが、祖母の遺書により、死んだと思っていた母親が生きていたことがわかる。しかも、母親は有名女優で、兄弟が3人もいるというものだった…!!

レビュー

懐かしいなぁ。もう数十年前の作品ですよね。当時はすごく質の高い作品と感じていたものの、ある種の「重さ」が辛かった。でも、今は自分もそれだけ齢を重ねたので、登場人物すべての気持ちに、寄り添っていくことができるのです。私も大人になったんだなぁ(笑)。

今読み返しても、「人間」というものを骨太に描いているから、色あせることがない。懐かしくて3巻無料立ち読みしたら、結局全巻購入してしまいました(笑)。思うツボだねw。
北海道の風景が、またいいですね。この作品の中で描かれる北海道が好きで、憧れました。

しかし、読み返してみても、私はどうも菫さん、ずるいなぁって思っちゃうのよね。苦しんでいるのは分かるし、理由も分かるのだけど、ゆりに甘えすぎだろ、と。
また、葵くんの想いが切なすぎて、途中見ていて苦しくなります。社会規範を超えてさえ貫こうとするゆりへの想いを抱えてなお、ゆりの幸せを願わずにはいられない彼の心を思うと、辛いなぁ。葵君、私は君が好きだよ。

登場人物すべてが個性があって魅力的です。深い、人間の心の苦しみや葛藤を真正面から描いているから、時が経ってもこの作品は人の心を打つのだろうなぁと。ゆりのまっすぐで、正直な性格は憎めないです。彼女は本当に、美しい。デブでブスという設定にもかかわらず、人を魅了します。

最愛の人と別れた後、どうやって生きていったらいいのか。本作ではそれぞれにそんな心境のキャラクターのその後のストーリーが描かれており、表面上に見えるより内面は繊細なキャラたちの苦しみが描かれていました。
「一番愛してる人に死なれちゃったらあとはもう誰が恋人でもおんなじなんだ お母さんには」と、人生の一番いいときは過ぎてしまったと感じている消化試合のような残りの人生を、主人公がそれぞれに関わっていくことでほんの少しずつ影響を与えてくれたのだと思いました。
すみれは真面目だからこそ、今でも思い出して泣いてしまうくらい亡くなった恋人が好きなのに、ゆりに惹かれる気持ちをどうしたらいいのかと悩んでいるところで「自分を責めるのは特等席が一つしかないと決めているからさ」と諭されるシーンが印象深いです。人生の第一志望ルートから落っこちてしまったとき、どうやってそれを受け止めてどうやって別ルートを進むのか。またその別ルートはその人にとってずっと第二希望以下にしかならないのか。
横暴な性格の家族!という始まりでしたが、どこまでも全員が真面目なんだと思いました。

笑いあり、涙あり、そして暖かな愛に溢れる作品です。読み終わった後に幸せのため息が出るような。
ストーリーは、諸々事情ありの寄せ集め家族が、それぞれの思いを昇華させていく所が主軸ですが、長編にもかかわらず最後まで飽きさせません。
それから、主人公の恋も見所の一つです。蕾が花を咲かせる様を、スローで見たらきっとこんな感じなんだろうと思います。恋の展開はスローですが、これもまた寄せ集めの家族ならではの様々な事件ありで、飽きません。主人公がもう少しテンポアップして女の花を咲かせてくれたらと、ちょっと焦れったかったのは本当ですが。
でも、何より素晴らしいと思ったのは、登場人物たちの台詞です。
言ってること結構深い。心理をついてるというか…心にずしんときます。
主人公のすっとぼけた思わずほっこりしてしまうセリフなんかもとても好きです。
読んだらきっと心に残る作品の一つになると思います。是非読んでみてください。

気が付けば号泣してました。
素晴らしいお話です。
心の柔らかい部分が鷲掴みにされるけど、不思議と心地よい痛みです。

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