病室の秘め事【読破!読みモノシリーズ】

『病室の秘め事』
病室の空気はいつもと同じだった。白い天井、消毒液の微かな匂い、隣のベッドから聞こえるおばあちゃんの寝息。そして、時計の針が刻む単調な音。入院生活も何日目か、数えるのも億劫になっていた。昼間はまだ耐えられる。お見舞いの友達が持ってくるくだらない話や、看護師の事務的な笑顔で気を紛らわせられる。でも、夜が訪れると、すべてが静まり返り、私の体は疼き始める。

昨夜もそうだった。消灯時間が過ぎ、病室が闇に沈むと、眠気が遠のいてしまった。スマホの充電は切れ、本を読むにも暗すぎる。仕方なく布団に潜り込んでいたが、手が自然と動き出した。最初は無意識に、太ももの内側を指先でなぞるだけだった。柔らかな肌に触れるたび、微かな震えが走り、体の奥が熱を帯びてくる。頭では「ここは病院だから、ダメなのに」と理性が囁くのに、手は止まらない。カーテン一枚隔てた向こうに誰かがいる、その緊張感が逆に私を煽った。

息を殺し、シーツの下でそっと手を滑らせた。下着の端を指で引っかけ、冷たい空気がそこに触れた瞬間、体がビクンと跳ねる。慌てて周囲を見回したが、隣のおばあちゃんは眠ったまま。ホッと胸を撫で下ろしつつ、目を閉じた。頭に浮かんだのは、学校のプールで見たあの子の背中。水滴が筋肉のラインを滑り落ちる姿が、なぜかこんな夜に蘇ってくる。指の動きが自然と早まり、布団の中で吐息が漏れそうになる。唇を噛み締めて声を抑えながら、体の奥から湧き上がる熱に溺れていた。
その時、カーテンの隙間から影が動いた。心臓が跳ね上がり、手がピタリと止まる。見間違いかと思ったが、次の瞬間、低い声が闇を裂いた。

「…こんな時間に起きてるんだね。」
白衣のシルエットが月明かりに浮かび、担当のドクターだった。若くて、どこか冷めた雰囲気のあの男。巡回でもない時間にここにいる理由が分からず、頭が混乱する。私は慌てて震える声で答えた。
「え、あ…びっくりしただけです。寝てました…。」
嘘だとバレバレだっただろう。声が上ずり、頬が熱い。ドクターは静かに近づき、カーテンを少し開けた。月光が彼の顔を照らし、普段より柔らかい表情がそこにあった。

「寝てたにしては、息が荒いね。…何してたの?」
その言葉に、体が凍りつく。見られていたのだ。どのくらい?いつから?頭の中がパニックに陥るが、彼の目は逃げ場を与えてくれない。嘘をつき通すのも限界だった。
「…何も、してないです。ただ眠れなくて…。」
「ふぅん。でも、顔が赤いよ。熱でもあるのかな、診てあげようか?」
そう言って、彼はベッドの端に腰を下ろした。距離が近すぎて、心臓が再び暴れ出す。彼の手が私の額に触れ、冷たい指先が首筋へと滑っていく。ゾクッとする感覚に、体が勝手に反応してしまう。
「…大丈夫です、熱はないですって。」
「そうか。でも、さっきの様子を見てると、そうでもなさそうだけどね。」
彼はニヤリと笑い、意地悪な光を目に宿した。絶対に気づいている。私が何をしていたか、全部お見通しなのだ。認めるわけにはいかないのに、体はまだ熱を帯びたまま。隠しきれないその瞬間、彼の手が布団の上から私の太ももに触れた。

「ここ、熱いね。自分で触ってたんだろ?」
言い逃れはもう無理だった。顔を真っ赤にして俯くと、彼は小さく笑った。
「恥ずかしがることないよ。入院生活、退屈だもんな。…手伝ってあげようか?」
その言葉に、頭が真っ白になる。冗談ではないと気づいた瞬間、拒否する言葉が喉に詰まった。ただ黙っていると、彼の手が布団の中へ滑り込み、冷たい指が私の肌に触れた。あまりの衝撃に、声が漏れそうになり、慌てて口を押さえる。
「…ダメ、誰か来たら…。」
「静かにしてれば大丈夫だよ。巡回はもう終わったし。」
彼の手が下着の端をずらし、指先が私の最も敏感な部分に触れた瞬間、体が跳ね上がった。自分で触るのとは比べ物にならない感覚が押し寄せ、息が荒くなる。声を出さないよう必死に我慢しながら、彼の指に身を委ねていた。
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それから数日が経ち、夜になると彼が現れることが増えた。最初は恥ずかしさと恐怖でどうにかなりそうだったが、いつしかそのスリルが私を虜にしていた。昨夜も、巡回が終わるのを待って、彼がカーテンの向こうから現れた。
「今夜も眠れないみたいだね。」
彼の声は低く、どこか甘い響きを帯びていた。私はベッドに横たわり、彼を見上げて小さく笑った。
「…ドクターのせいですけどね。」
「そうか。じゃあ、責任取らないとな。」

彼は笑いながらベッドに近づき、布団をそっとめくった。白衣の下から覗く手が私の肌に触れ、冷たい指が熱を帯びた体を這う。首筋に唇が触れ、微かな吐息が耳元をくすぐる。私は声を抑えるのに必死だったが、体は正直に反応してしまう。
「こんな可愛い患者、放っておけないよ。」
彼の言葉が耳に響き、私は小さく抗議する。
「それ、医者としてどうなんですか?」
「医者としてじゃないよ。男として、かな。」
その言葉とともに、彼の手が私の体をさらに深く探り始めた。下着を完全に剥ぎ取られ、冷たい空気が肌を撫でる。次の瞬間、彼の体が私に覆いかぶさり、熱い吐息が首筋に当たった。隣のおばあちゃんが眠るすぐそばで、彼の腰が私に押し付けられ、布団の中で二人の体が絡み合う。声を出さないよう唇を噛み締めながら、私は彼の動きに身を任せていた。

彼の指が私の奥を探り、熱い波が体を駆け巡る。布団の中で小さく震えながら、私は彼の肩にしがみついた。スリルと快感が混じり合い、頭の中が真っ白になる。やがて、彼の動きが激しさを増し、私の体が限界を迎えた瞬間、静かな病室に微かな吐息だけが響いた。


終わった後、彼は布団を整え、いつものクールな顔で立ち上がる。
「おとなしくしてなさい。安静が大事だよ。」
そう言い残し、彼はカーテンを閉めて去っていった。

私は汗ばんだ体を布団に沈め、変な満足感に浸りながら目を閉じた。退院したらこんな夜も終わるのだろうか。少し寂しい気もするが、今はこの瞬間が全てだった。
