「Re:ゼロから始める異世界生活 第三章 Truth of Zero」の魅力をネタバレ込みで徹底解説!

Web小説を元にアニメ化や映画化までされ、人気好調のRe:ゼロから始める異世界生活(リゼロ)。今回は漫画版Re:ゼロから始める異世界生活第三章Truth of Zeroの魅力について、ネタバレ込みで魅力を解説してきます!


まず、Re:ゼロから始める異世界生活(以下リゼロ)の大まかなあらすじについてご紹介します。主人公ナツキ・スバル(菜月昴)は、引きこもりの高校生でした。深夜にコンビニへと買い物に行き、店内から出たところでなんの前触れもなく異世界へと転移されます。異世界にきたスバルは、異世界系のお約束とも言えるチート能力や魔法に期待していましたが、何も変わっておらず、トラブルに巻きこまれてしまいます。そんな時に銀髪のハーフエルフの女の子に助けられ、その子に一目惚れします。女の子の探し物を手伝うことになったスバルは、ありそうな場所にたどり着きますが、待ち伏せていた何者かに女の子と一緒に殺されてしまいます。

意識が消えていく中で、「必ず君を救ってみせる」と強く思ったスバル。このまま死んでしまうと思ったスバルですが、次の瞬間には自分が異世界召喚された、まさにその時に戻ってきました。チートも道具も何もなかったスバルには、自分が死んで初めて効果のある「死に戻り」という能力があったのです。何もしないでいると、さっき自分が死んだ通りに進んで行く物事、つまりこのままでは女の子はまた殺されてしまうと気づいたスバルは、女の子を死なせないために奔走します。自分に与えられた「死に戻り」の能力を駆使して、誰かが死ぬ未来を変えるために足掻くという物語です。


そして第3章は、今までと比べると物語が大きく動き出す章になっています。エミリアは次の王の候補者として、王都へ出向くことになります。そのエミリアへついていくことになったスバルも王都へ向かいます。王都についたスバルは、エミリアの用事が終わるまで宿で待っているように約束しますが、その約束を破ってエミリアの後を追います。その場では王の候補者である五人の少女が集まっており、各々が意思表明をする場でした。ですが、エミリアに向けられる視線は否定的なものばかりです。その理由は、エミリアが銀髪のハーフエルフであることに起因していました。かつて世界を恐怖に陥れたという魔女も銀髪のハーフエルフであり、その容姿にそっくりなエミリアに対するものは、ただの差別よりもさらにひどいものでした。

そんな雰囲気の中、スバルは「自分はエミリアの騎士だ」と声をあげます。ですが、態度も佇まいも騎士のそれとは程遠いスバルに対して、不快感をあらわにする騎士たち。そしてスバルは騎士の一人に、勝負を持ちかけられます。自分がエミリアの騎士であることを認めさせるために勝負を受けるスバルでしたが、異世界に来る前は引きこもりの高校生、異世界に来てからも、「死に戻り」以外の力を何も持たないスバルは、その勝負でボロボロにされます。そして勝負の後、勝手な行動をエミリアに咎められ、言い争いになり、エミリアにも見放されてしまい異世界に来て初めてひとりぼっちとなったスバル。エミリアと喧嘩別れをしたスバルは、王の候補者の一人であるものの家に、勝負でボロボロになった体の治療という名目でお世話になります。そしてお屋敷でお世話になっている最中、エミリアたちに危機が迫っていることを知ります。

喧嘩別れしたとはいえ、エミリアに危険が迫っていると知って黙っていられないスバルはエミリアの元へ急ぎます。ですが途中、災害とも恐れられる魔獣に襲われ、傷を負います。なんとか切り抜けエミリアの元へ急ぎますが、たどり着いた先では全員がすでに殺されていました。そしてその状況を作ったものにスバル自身も殺されます。「死に戻り」したスバルは、その状況をなんとか打開するために周囲に協力を求めますが、相手にされません。憤ったスバルは一人でなんとかしてやると奮起します。ですがそれで状況が好転するわけでもなく、また「死に戻り」をしたスバルは、諦めることを選ぼうとします。ですが、スバルが諦めることを許さないレムの説得により、スバルは状況を打破するために動き始めます。周りに協力してもらうための材料を揃え、自身が「死に戻り」によって得た情報を駆使して魔獣を撃破、さらにその先にいるエミリアたちを殺そうとしている者たちを退けます。

全てが終わり、全員が無事に済んだと思っていたスバルでしたが、エミリアの次の一言によってスバルは困惑します。「ーーレムって、誰のこと?」それは、魔獣討伐が終わり、スバルとは別行動していたレムの身に何かが起こったということでした。これが第3章のあらすじになります。


この第3章の魅力は、いままでの物語の中心であった登場人物や舞台よりも、大きな関係にスバルが巻き込まれていくことにあります。屋敷や王都の一角で起こった出来事ではなく、王都全体、また自分の政敵とも言える相手との協力など、今までの章よりはるかに規模が大きな話になっていて、その中でスバルが奔走する姿が魅力です。しかも、みんなが助かるまでの道までたどり着く道中で、スバルは狂ってしまったり、ただ復讐のためだけに動いたり、諦めて逃げ出そうとしたりと物語の主人公としてはあまりにも似合わないような考えや姿を見せます。ですがこの姿は、死んで戻る以外何も特別な能力のない主人公は、ただの人間と同じで特別な人間ではないということをよく表していて、根性や精神ではどうすることも出来ないという、ある意味とてもリアルな描写です。

よくある物語のように、「絶対に諦めない」「諦めなければなんとかなる」といったことが、この物語には通用しません。そして最初から正解の道へとたどり着くのではなく、間違ったり狂ってしまったり、そういう人間の汚い部分にも焦点が当てられているのが魅力です。間違った道を歩いたり、とても人間らしい苦悩に苦しみながら、それでも成長していくスバルの姿は、とても人間味にあふれていて、だからこそ魅力があります。また、この章から出てくる人物それぞれにも、それぞれの思惑があり、一筋縄ではスバルに協力してくれないというのも、この物語の魅力です。ただ善意で協力する訳ではなく自分にもメリットがあるから協力し、そのメリットがリスクに見合わないのであれば協力しないという考えは、とてもリアルな駆け引きの演出にもなっています。そして何より、ただのハッピーエンドでは終わらせないのが大きな魅力です。全員が無事で何事もなくハッピーエンドという訳ではなく、何かを取りこぼしてしまう終わり方だからこそ、これから先の物語に興味が湧き、この章だけでは終わらない面白さになっています。