漫画「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」の魅力をネタバレ込みで徹底解説!

「かぐや様は告らせたい」は赤坂アカの漫画作品となっています。常人離れした負けず嫌い、恋愛観、知性を持った2人が知恵を尽くして相手に告白させようという内容になっています。2人はお互いに恋焦がれていますが負けず嫌いのため恋がなかなか発展せず、相手に告白させようとバトルのようになっていくのが面白い作品です。


物語の舞台は私立秀知院学園(しりつしゅうちいんがくえん)という、かつては貴族や士族を教育するために建てられた学園となっています。貴族制が無くなった現在でも家柄がいい男女が通う名門校です。主人公の『四宮かぐや』はそんな生徒たちをまとめ上げて率いる生徒会の副会長です。4大財閥のひとつに数えられる四宮グループ総帥の長女であるかぐやは正真正銘の令嬢です。容姿端麗、頭脳明晰でありながら振る舞いも美しく、学園の生徒からは魅力的な人物でありカリスマがあると認識されています。多くの分野で天才的な才能を発揮するかぐやが支えるのが生徒会長の『白銀御行』です。

御行はズボンに手を入れながら歩いたり、歩きながら本を読んでいたりと洗練されていない振る舞いが目立ちますが、秀才ばかりの学園の中にいながら成績が不動の1位であり優れた頭脳を持っています。秀知院学園では初等部からの生徒は純院、中途入学の生徒は混院と呼ばれ混院は下に見られるという風習があります。混院の生徒会長は歴代でも数えるほどで御行が3人目です。全校生徒の尊敬のまなざしを受けて付き合っているとも噂されている2人ですが、2人とも恋愛においては価値観がずれていました。かぐやも御行も相手のことが気になっていますが、内に秘めた負けず嫌いな性格が仇となって2人の仲は全く進展しません。

かぐやは御行が全てを投げ打って告白してくれば自分に見合った男に鍛えなおしてやってもいいと考えていて、一方の御行もかぐやがどうしても付き合ってくれというのなら考えてやらんこともないと思っています。


お互いに相手が告白してくるのは時間の問題だと考えており、さりげないアプローチもしていますが何の進展もないまま半年が過ぎていました。焦った2人は考え方が『付き合ってやってもいい』から『いかに相手に告白させるか』に変わっていきます。かぐやと御行がなかなか決着が着かない頭脳戦を繰り広げていると、書記の『藤原千花』が映画のペアチケットを2人に譲ってきます。千花は間延びした話し方が特徴の温和な性格で、かぐやと御行の繰り広げる恋愛のバトルには全く気が付きません。映画のペアチケットが当たったけれど、家の方針で見れないという千花はチケットを譲ってきたのです。

何気なくかぐやを映画に誘いかける御行ですが、千花の一言で突然窮地に立たされることになります。なんとその映画は男女で見に行くと2人は結ばれるというジンクスがあったのです。『あら会長、今、私の事を誘いましたか?男女で見に行くと結ばれる映画に、私と会長の男女で行きたいと、今そうおっしゃったのですか?それはまるでー』あらあらまあまあと言いながら意味深なことを言うかぐやですが、御行もかぐやの言うことに納得して『ーまるで告白のようではないか!』と考えます。かぐやも御行も負けず嫌いでプライドが高く恋愛観が似ているため、『告白した方が負け』というルールが暗黙のうちに出来上がっていたのです。

御行は状況の打開策を想像してチケットを売りに行くか?という提案を考えますが『あらまあ、会長ともあろうお方が慌てふためいて、お可愛いこと』と生暖かい目で笑われるのを想像して、『許されない!白銀の征く道に逃げ道なし!逃げるのは貴様だ四宮!』と攻めの姿勢になります。ごくわずかな時間で御行が導き出した答えは、自分は映画のジンクスを信じておらず、逆にかぐやがジンクスを信じているようだけれど自分と映画を見に行きたいのか?という問いかけでした。映画に誘う意思を見せながらも、2人で映画を見に行くかの選択権をかぐやに譲渡する手腕にかぐやもわずかに考え込みます。

簡単なのは誘いを断ることですが、かぐやにとってそれはできないことでした。実は今回のペアチケットを千花に贈ったのはかぐやです。家庭の教育方針や人間関係を考慮して千花を選び、御行のスケジュールをチェックして休日と被る映画をセレクトして、チケットを包装して懸賞を偽造し、業者を装って千花の家のポストに投函という工作を裏で行っていました。これらの工作は全てかぐやが自分の力で行っています。家柄や積み上げてきた実績により素直になれないかぐやですが、御行への恋心は偽りないものであることがわかります。むしろ重すぎるくらいの愛情を抱えており、かぐやのひたむきな愛情は応援したくなります。

映画の誘いを断るのは今までの工作が無駄になるし、なによりも御行から二度と映画に誘われないかもしれないと思ったかぐやは『それは乙女的にNO!そのような選択肢はNO!退路は無い!』と考えて覚悟を決めます。油断なく返答を待っている御行に対してかぐやが出した答えは『やはりどうしてもこういったお話は信じてしまうもので…行くならせめてもっと情熱的にお誘いいただきたいです…』と儚げな声と姿で答えることでした。かぐやの声や態度は四宮家の一子相伝の交渉術『純真無垢(カマトト)』と呼ばれるものです。その計算されつくした表情、声音は神でさえ思考を乱されるという自負があります。

かぐやの儚げな美少女の姿に心が大きく乱され『まぁ…告白は男の役目なのかな…』とプライドが瓦解した御行は考えます。その隙を見逃さないかぐやは御行の手を両手で包み『私だって恋の一つもしてみたい年頃なのです』ときゅるきゅるきゅる~んという擬音を出しながら追撃します。逆転の糸口を探す御行ですが普段より可愛いかぐやの姿にタジタジで受け身の姿勢になっており、もはや勝敗は決したかと思われました。状況が変わったのは千花の発言です。『あ、もし恋愛映画がお嫌でしたら、とっとり鳥の助のチケットもありますよ』そう言われたかぐやと御行の思考はショートしそうになります。

恋焦がれる相手との極限のバトルを繰り広げた2人の思考では映画と告白について決着が着きかけており、そこに別の映画という異物が入り込んできたことで脳の処理能力の限界を越えてしまったのです。頭を使いすぎて糖分が足りないと直感したかぐやと御行は、衝動的にそばにあった饅頭に手を伸ばします。しかし、午後の予鈴がなったことで『あ、午後の授業始まっちゃいますね』と千花が饅頭を食べて授業に行ってしまいます。後には脳を使いすぎて倒れ伏すかぐやと御行の姿がありました。


放課後にはトランプのババ抜きを題材にバトルが行われます。『トランプ?そんな子供の遊び』と御行はやる気のない返事をしますが、『勝者は敗者になんでも一つお願いごとが出来る』とかぐやが提案したことで御行の目の色が変わります。張りつめた表情でかぐやのきわどい水着やメイドのコスプレを想像する御行ですが、かぐやに釘を刺されてしまいました。紳士的なお願いをするという勝利条件でババ抜きを始める2人ですが、ゲームの進行が御行に有利になってもかぐやは余裕の表情を崩さず、イカサマをしている様子もありません。かぐやは負けることを想定しており、勝負が終わった後の行動に真意が隠されていました。

御行の意思を誘導して前回うやむやになった映画に誘われたいかぐやですが、かぐやが隠していたチケットを御行が抜き取ったことで計画が台無しになります。チケットが無いのでかぐやが暗い顔で沈んでいると、御行は地面にチケットが落ちていたことにしてチケットを1枚かぐやに返します。御行のかぐやへのお願いはチケットを1枚もらうというもので、どちらも告白する立場にならずデートができるという自分もかぐやも満足できるお願いでした。この後も2人を中心とした物語が語られ、登場人物も増えていきます。

かぐや様は告らせたいは週刊ヤングジャンプで連載されている人気作品です。『かぐや様は告らせたい 同人誌版』や『かぐや様を語りたい』というスピンオフも出ており、2019年はアニメ化も予定されています。キャラクターの心理描写と恋愛絡みで頭を使って面白いことをするのが特徴の作品ですので、興味が湧いたらぜひ読んでみて下さい。