青年漫画： オークション・ハウス

「オークション・ハウス」は、原作が小池一夫、作画が叶精作の、美術界を舞台にしたハードボイルド調の日本の長編漫画です。原作者の小池一夫は「子連れ狼」や「御用牙」などの原作者でもあり、「漫画はキャラ起てが大事だ」の信条の通り、インパクトのあるキャラクターを縦横無尽に動かすのが得意な作家さんで、「小池劇画はアメリカン・コミックスにまで影響を与えた」ともいわれており、2001年にはアメリカのアイズナー賞を受賞しています。「オークション・ハウス」の絵は、小池一夫に師事した叶精作によって描かれ、画力が高く重厚でリアルなタッチが特徴です。

　お話は美術の蘊蓄がたっぷりで、アートに関心がある方はもちろん、適度に解説が盛り込まれているので美術に疎い人も楽しめるようになっています。ハードボイルドに付き物といってもいい美女とバイオレンスも盛り込まれ、アメリカ映画を見ているような展開です。幼少の頃、フェルメールの「レースを編む女」を狙った男たちに両親を殺された主人公リュウ・ソーゲンが、復讐のために美術界に飛び込みます。美術品界の中心地ロンドンにある超有名なオークション・ハウス「オリバー社」でマネージメントディレクターを務める主人公は、贋作を見分ける豊富な知識を持っています。また、世界に3人しかいない「ヤマト拳法」の継承者でもあり、知力と武術とを駆使しながら美術界の裏社会に対峙する活躍が描かれています。

　特に前半は美術に関する事件が立て続けに起きる知的な展開になっており、美術に関心のある方にはオススメです。後半はバイオレンスとエロスがメインの展開になります。きちんとしたベースの知識の上に画力の高い絵柄で話が展開するため、厚みのある大人向けの漫画と言えるでしょう。たくさん出てくる主人公の妻や愛人たちもなかなかの見ものです。悪人たち相手にも大活躍ですが、女性たち相手にも同じくらい大活躍で、さすがハードボイルドの主人公の面目躍如といったところです。無敵の主人公が大活躍する大人の漫画を楽しみたい方には、是非お勧めしたい作品です。もちろん小池先生ファンにはおなじみの「エレクチオン」もたくさん出てきますのでお楽しみに！

「オークション・ハウス」は「ビジネスジャンプ（集英社）」で1990年から2003年まで連載され、単行本は全34巻出版されています。読み応えもボリュームもたっぷりな上に全巻無料で読めるので、この機会に堪能してみてはいかがでしょうか。大人の男性にオススメです。

【代表作】
小池一夫：「子連れ狼」「クライングフリーマン」「オークション・ハウス」「上がってなンボ!!シリーズ」「弐十手物語」
叶精作：「実験人形ダミー・オスカー」「魔物語 愛しのベティ」「凍京NECRO トウキョウ・ネクロ（原作：ニトロプラス）」