青年漫画： 銭華

　倉科遼が監修した漫画は水商売の女性を主人公としたものが多く、特に芯の強い女性を描いたものが多いです。その中でも「銭華」は特にオススメで、芳文社から刊行された3巻構成の漫画であり、2002年に第１巻が発売されました。これを原作としたテレビドラマが2006年、日本テレビで放映されました。ドラマと漫画では若干ストーリーが異なりますが、相場の醍醐味やスリルが味わえるのは漫画の方かと思います。

　主人公・坂本千尋には、高知の権力者の妾である母がいました。しかし母は、その権力者に病気を治してもらえず、不遇の死を遂げます。それが生活の貧しさにあると思った高校生の千尋は、復讐のために東京で大金を稼ごうと決意します。これまで株の勉強をしていたこともあり、兜町の投資顧問会社に単身乗り込みます。18歳でコネも学歴もなかった彼女は、その才覚だけで入社試験（面接）を突破し、投資会社社長の片腕として働くことになります。そこで様々な経験を果たし、最初は電話応対から始まり、とうとう彼女は兜町という金融の街の女帝にのし上がります。最終的には時の総理大臣の金庫番兼愛人にまでなります。

　まずは主人公・千尋の頭のよさと気の強さに魅かれるところがあります。濡れ場の多い作品ですが、決して体だけでのし上がったのではなく、あくまでも千尋の実力ありきのサクセスストーリーだと言えます。坂本竜馬のふるさとでもある高知での暮らしぶりは、その後の彼女の人格や能力にいかに影響を与えたかが、巻頭の見どころかと思います。

　次に、株や金融に関する用語が多々出てきます。その都度解説があるため、特に株の知識がなくても楽しく読むことができます。この舞台は1980年後半の日本です。現代のようにパソコンを使ったトレードは一切行われませんし、今のようにパソコンで投資するアマチュアの投資家もいません。バブル経済真っ盛りの時代からそれがはじけて金融ショックを迎える波乱万丈な時期です。激動の金融経済と主人公がどう立ち向かうかかも面白いところです。ラストについてや、復讐を果たせたかどうかはあえてここで説明しませんが、とても意外な展開になります。ハッピーエンドなのかそれどもバッドエンドなのか、最後まで目が離せません。

以上ですが、濃い内容であるのに、三巻という比較的短編で、時の移り変わりも早い作品です。興味を持った方は、試し読み無しの全巻無料で読めるので是非読んでみてください。

【代表作】
倉科遼：「女帝シリーズ」「夜王-YAOH」「黒服物語」「嬢王」「帝王」
和気一作：「女帝シリーズ」「銭華」「柳都物語」「ごくつま刑事」